雪中墓
国道を外れて登山道へと向かう林道に入れば、そこには青葉に輝きさわさわとささやくようなやわらかい生命の息吹に溢れ明るかったシーズン中の姿はカケラも無く、ただ、白い塊が道と森の狭間に壁を作りその先にある小屋へ管理の為数日に一度訪れる村役場の人間がようやく歩ける程度に圧迫して作った細い獣道だけ。そびえる細い木々だけがじっと静かに、風に舞いながら降り積もる雪の踊る様を静観していた。 その林道の入り口に立てかけられた案内板の脇で、彼女は佇んでいた。雪の重みで傾いた板に背中を預けひっそりと。 白い風景に溶け込みそうな淡いセーターをふんわりと羽織り、目の前を横切る国道の向かい側から聞こえる川の流れに耳を傾け、虚ろに、何を見ているというでもない瞳。 自分を抱きしめるように組んだ両腕は一見凍えているよう思えるが、よく見れば震えているわけでもなく、その表情は氷点下ぎりぎりの寒さもまるで応えていないような風に見えた。 奥深い山の遥か頂上付近をかすめるように走るその道は「国道」と呼ばれてはいるものの、一世代を超える時代から進み始めた過疎と数年前に山をくり貫き出来た高速道路のため近辺からは人の気配も消えてしまい、夏場の登山シーズンだけ頂上にぽつんとある小さな湖目指して通りすがる物好きな登山者が一日にほんの数人、片手で数えられるほどだけようやく訪れる裏寂れた道だった。 夏でさえ肌寒くもの哀しさ漂う風景。冬ともなればひたすらに厳しく凍え命眠る世界。その中に、彼女はとても穏やかに溶け込むように佇んでいた。 雪女のように…… ただ、彼女の表情の虚ろさに同居する穏やかさが伝説や物語などに出てくる凍てついた娘などではないだろう事を教えてくれる。 その日その場所を通りがかった老夫婦にとって不幸であったことは、彼らの目指した小さな湖へ続く林道が冬季通行止めであったことであろう。 二人は冬用のタイヤに履き替えたばかりの四駆車を案内板の横にある小さな駐車スペースに慎重に入れて停め、車を降りて林道の入り口に張られた「冬季通行止」の標識がぶらさがる綱を撫でながら大きく溜息をついた。 そして彼女に振り向き 「冬は湖に行けんようになっとんやねぇ」苦笑いしながら語りかけた。 彼女は「行こうと思えば行けないこともないんですけどね」ゆっくりと微笑みながら応える。 「確かに行けんこともないやろうけんど、この雪やと私らみたいな年寄りにはえらいわねぇ」 再び溜息をつく老夫婦を見ながら彼女は瞳を伏せた。 「お嬢さんもこの先の湖を見に来さったん?」 老いた婦人が上品に綴る方言に、反射的に笑顔が作られる。 「ええ、でも私一人ではとても行けそうにないので一緒に行ってくれる人が来ないかと思って待っていたんですけど……」 最後に小さく「しょうがないですね、冬場は、しょうがないですね」と繰り返す。 湖に行くのを諦めてふもとに戻るなら車に同乗しませんかという老夫婦の薦めを「夕暮れには迎えがきますから」と、彼女はやんわりと断る。 「そう?それじゃぁ私らはもう行くけんど…よかったらこれ使ってや」 薄い使い捨てカイロを彼女に渡し、車に乗ると老夫婦はもと来た道を戻って行った。 「湖に何や特別な思い入れでもあるんやろうか、年頃の若い娘さんがあんなところで一人でねぇ」 黙々と雪道を運転する夫に語るとはなしに婦人が彼女を振り返りながら呟いた。 湖にあるのは、龍と村娘の伝説。 雨と恵みの神であると同時に空の具合を操るが故恐れられた龍神は一人の村娘に焦がれ欲した。が、娘が神の域に耐えうる肉体を持っていないため、人の世で生き死ぬが幸せであろうと、諦めた。 娘の生涯を見届けるだけでよい。時折花など携えて湖を訪ねてくれればよい。 龍の思いなど知り得ぬ娘は村の田のため、畑のため、畦に咲く花を摘み湖に日参する。 「今日の糧があるのは龍神さまのおかげです」 夏の日照りを潤し風雨の災害を谷間で押し止め、稲穂実らせ豊かに暮らせるのは龍神の加護あってこそと疑わない娘の姿を見つめるだけで至福と諦め供えられる花に心豊を想う龍。 不安と不審に謗るのは娘の両親と彼女を想う青年。 彼らは龍神に娘かどわかされる事を恐れ、ある日とうとう彼女を隠した。 湖の傍では龍神が待てど暮らせど花を携えた娘は現れない。 一方では湖へ通う事を禁じられ龍神への感謝を携える術を閉ざせられた娘が突然詣を止めたことで神が怒るのではと恐れ一粒の米さえ口に入れることができなくなっていた。 食べる力を失った者にやがて訪れる穏やかな終末。荒れた唇。皺のよった腕に頬。白く濁った眼球。 龍神の愛しんだ娘、龍神を奉った娘。その死によって龍の怒りに触れることを恐れた村人は娘の死を隠すように弔ったが、娘を抱きかかえた大地から想いは染み出て龍にその死を知らせた。 悲しみ怒り狂った龍は長き月日村に恵みをもたらす事を許さなかったが、龍を想う娘がやがて湖の傍に咲く花となり龍を落ち着かせると村はまた恵みを取り戻した。 湖に伝わる切ない伝説を彼女は知っているのか、知らずにいるのか。 老夫婦は林道に佇む彼女と伝説の娘をなぞらせ思いながらその場を後にした。 ――今日も誰も来なかった―― もとよりこの時期、湖へ行くために同行してくれる人など無い。 深い雪道を案内の一つも無いまま行くのは自殺行為に等しい。しかし彼女は行かずにおれない。かの龍神の住むかの娘の咲く湖へ行かねばならない。その身ひとつで。 彼女はずっと待っていた。 冬季通行止めの林道入り口でこの雪道を厭うことなく、夏には見ることのできない冬景色の湖を見たいという旅人がいるかもしれない、そういう人が現れればきっと自分を連れて行ってくれる。 そして、見つけてくれるかもしれない… 彼女はずっと待っていた。その場所で。 役場の人間が作った獣道も一晩経つと膝まで雪積もる道。そこを一緒に歩いて行ってくれる誰かを彼女はずっと待っている。 ――でも、今日も誰も来なかった―― 彼女はゆっくりと湖のある頂上を臨み足を動かし始めた。 通行止に張られた縄をふわりと乗り越え細い林道へ足を踏み入れる。 見回りの役人は数日に一度しか来ない。だから林道に作られた細い道にもそれなりに雪は降り積もっている。 さくっと一歩踏み込めば膝まで軽く雪に埋まった。その中に足をめり込ませては引っこ抜くようにざくっざくっと重く歩く。 そして繰り返し呟いた。 ――今日も誰も来なかった―― ――あの日、あんなトコ行かなきゃよかった―― 彼女の敗因はほんのちょっとのすれ違い。 会社の同僚に誘われた飲み会。職場の若い女の子同士での飲み会だと思って行った先には知らない会社の若い男性。俗に言う「合コン」というやつ。 驚きはしたけれど、たまにはこんな飲み会もいいかも、という好奇心。 それから先の記憶はとても混沌としていて容易に思い出せない。 気が付けばこの雪深い林道の入り口でじっと誰かを待っていた。 偶然に通りすがったふもとの村の人が龍と娘の伝説を聞かせてくれてからずっとこの入り口で待ち続け、夕闇迫れば諦めて林道を独り湖に向かい歩く日々。 ――そして、今日も誰も来なかった―― 歩むほど深さを増す雪に合わせて彼女の荷物も増えてゆく。 いつから握り締めていたのだろう、その両手にそれぞれ一本ずつの太い手首。その先でうな垂れている黒い塊とそれに続く大きな体。引きずられる物体は彼女の足跡を消しながら一筋の溝を作ってゆく。 舞い散る雪の中彼女は、額から首筋から細い汗を滴らせながらただひたすら歩き続ける。その物体をひきずりながら。 時折立ち止まり片手で汗を拭い息を整え直すとまた深い雪の小道を歩き始める。 ――もう少し、もう少し―― 呪文のように呟きながら。 ――もう少しで軽くなるから―― やがて左右の雪の壁が崩れるように景色が左右に広がりはじめ、明るく輝く広場にたどりつく。 何もない平らな広場は雲に覆われながらも差し込む陽射しを細く受け、そしてまたそれを空に返すかのようにやわらかな輝きを放っていた。 ――湖―― 両手に抱えていた重い荷物をどさりとおろし、彼女は溜息を吐き捨てるように呟いた。 ぜいぜいと肩で息を上下させながら輝く広場に一歩踏み出す。ツルリと滑る靴の裏の感触。 ――ここが、あの伝説の湖―― 陽射しを受けて輝いていたのは凍った湖面。 荷物を雪の積もったほとりに置き、氷上にゆっくりと降り立ちながら彼女は中心を目指し歩く。 ――そうよ、ここで―― 凍った湖は中心に行くほど薄く危うい。靴の下でキシキシと響く音色が高さを増す。 蘇る最後の記憶。 騙されるような形で参加してしまった合コンでたまたま隣に座った馴れ馴れしい男はいきなり髪を撫でてきた。 「きれいだねぇ、さらさらしてて。うわぁ指どおりがすごくいいじゃないか。何か特別なコンディショナーとか使ってるの?美容院でしか売ってないやつ?」 気持ち悪い。 「肌もすごく滑らかで赤ちゃんみたいじゃない。美容液に気使ってるのかな?」 酒の勢いを借りながら頬をなぞる指。 気持ち悪い。 「そうだ、二次会で行く店がさ、僕の行きつけのバーなんだよね、キミも来るよね?」 『来るよね?』と聞いているようなイントネーションだが目の奥に『来て当然』といった感じの妙な自信が見える。 「えぇ…でも…」 断ろうとした矢先、この合コンに誘った同僚が目配せしてきた。 ――断らないでよね―― ――まぁ、他の皆も行くんなら、しょうがないか―― 肩に回されていた手をつまむように解きながら「えぇ、まぁ…」と曖昧な返事をした。 なぜ、あの時断ってまっすぐ家に帰らなかったのだろう。 足元で今にも割れそうな薄い氷を見つめながら彼女は回想を続ける。 二次会には確かに合コンに参加した殆どの顔が並んでいた。 夜が進むにつれ一人また一人と店から姿を消していき、それに従うように彼女も一人抜けて帰るつもりで店を出た。 地下鉄に乗りアパート近くの駅で降り、途中、民家も消え少しだけ寂しくなった路地でいきなり後ろから肩を抱きしめられた。 「やっぱり女の子を一人で帰すのは心配だからね、家まで送るよ」 さっきまで馴れ馴れしく彼女を触っていた青年がにっこりと微笑みながら、震える華奢な肩を抱きしめた。 ――きもち わるい―― まとわりつく指をはらいのける細い腕。 逃げようとする腰を無視して引き寄せようと絡みつく太い腕。 明らかすぎた勝敗。 その場所が彼女の車のあった駐車場だったのは、不幸の始まりだったのか、幸運の始まりだったのか。 ショルダーバックの中を手探りで探し取り出した車のキー。 遅い時間が幸いしたのか、時間をかけて後部座席の下に肉体を放り込む作業も近隣の住人に見咎められることなく進んだ。 ――これで当分は大丈夫―― あとはこの後ろの席の下にうずくまる物体をどうやって無き事にするか、それだけ。 あの合コンの二次会に参加した連中はこの物体が妙な形で発見されてしまって警察に事情聴取などされれば一番怪しい人物としてその人物の名前を出すだろう。 後ろに乗せた冷たい塊を抱えて車は静かに走り始めた。 そういえば以前何かの本で読んだ。過疎の進んだ心寂しい村のさらに奥、いわくのある伝説と美しい湧き水のおかげでもってふもとの村人に大切に管理されている小さな湖。 うろ覚えだった村の名前を頼りに携帯電話のネットで調べればたいした苦も無く情報は見つかった。雪の降り始める頃から溶け消える時期までそこへ向かう林道は閉ざされ人目に触れることなく湖まで行ける。役所の人間は数日に一度しか通わないので、その人が通って戻ったすぐ後を行けば獣道は出来ている上に足跡を深雪に消されることなく湖傍の管理小屋まで追うことができる。 林道から少し外れた場所で役場の人間が役目のため小屋を往復して帰ってゆくのを待ち、車から重い荷物を引きずり出し、真新しく出来た林道の細い道に入り込んだ。 それからは、ただひたすらに体力と精神との勝負だった。 白い細道を荷物引きずりながら歩きつつ脳裏に蘇るあの夜の恐怖。 酷使された腕と足が途中途中で囁く。 ――もうここで棄てて帰ろうよ、きっと雪解けまで見つからないよ―― しかし胸の奥底にある本能がそれを許さない。完全に、完璧に沈めるまでは安心できない。 やがて辿り着いた湖畔。表面凍らせたその場所は想像していた以上に小さく、湖と言うよりは沼か池と言った方が相応しい。 あんなに立派な伝説があるのだからそれは立派に大きな湖に違いない。そう信じてここまでやってきたのに…急に大きな不安に駆られる。 ――こんな小さな湖だとこの死体、完全に沈んでしまわないですぐに見つかってしまうかも―― しかしもう引き返すことはできない。 凍った湖面は中心に向かって歩くと張っていた氷も薄くなり足元がぴしぴし音を立て始めた。数メートル先を見れば凍てつききっていない部分が風に吹かれ水音をたてている。 「あそこまでこの死体を引きずってきてあそこに放り込むことができたら…」 勢いをつけて氷の上を滑らせることができればきっと上手く湖に放り込むことができるに違いない。そう思いながら雪の上に置いてきた死体を振り返った時だった。 足の下からピキピキと冷たい音が響きふっと体が軽くなる。と、次の瞬間には全身を突き刺すような痛みが襲う。冷たいと感じる暇もなかった。 ――沈んでいく―― 上に向かってもがくとも、遠くなってゆく青い光。暗い湖の底に向かいながら薄れてゆく意識。 ――私、死ぬの?―― 最後の悪あがきと言わんばかりに口からこぼれた息が大きな泡となって上昇し、やがて小さく散り散りになり消えていった。 ――私、死ぬのね―― 諦め閉じた瞳に突然映る何かの影。水底でゆらゆらと揺れる二つの人の姿。 ――死ぬ?いいえ、死ぬんじゃない… ――私は、既に死んでいるのよ―― あの夜。車の運転席に滑り込むように逃げ込んだが、ドアを閉める直前で覆いかぶさるように男も乗り込んできた。 「ドライブも悪くないけどお酒飲んでるんだから車は乗っちゃだめだよ」 キーを差し込みエンジンをかけようとする彼女の腕を強く掴み押さえつける。 酒臭い息。 ――いやだ、この人かなり酔ってる―― 抵抗が通じない。シートが倒される。声が出ない。狭い運転席のシートに無理やり背中を押し付けられ、涙が溢れてきた。 「あ、痛」 目の前の酒臭い口からぽつりと言葉が漏れて押さえつけていた腕の力がふと緩んだ。 酔った勢いの力任せで彼女の下半身に手を滑り込ませようとして、弾みをつけすぎ腕をギヤにしたたか打ちつけたらしい。 「痛ぇ」 男の注意が彼女からそれた瞬間を見逃さず彼女はするりと大きな体の下から抜け出ようと仰向けに横たわったまま頭から車を降りる。ハンドルに手をかけ車内に残った下半身を引きずり出そうとして、誤ってキーに触れ、エンジンがかかってしまった。 「あ、こら…」 抵抗されて男はますますムキになってしまう。逃げかけた彼女をすかさず掴み車内に連れ戻そうとして反射的に動かした腕がギヤをドライブに入れる。 ゆるゆると車が進み始めたが、二人とも気付かない。彼女を引きずり戻すためにふんばった足がアクセルを踏み、慌ててブレーキをかけたが遅かった。車外に上半身をはみ出していた彼女は僅か数秒の走行で地面にごつごつと頭を打ちつけぐったりとしてしまっていた。 ――そう、あの時死んでしまったのは私― 彼女の目の前で揺らぐ二つの影。一つはあの夜の男。もう一つは彼女自身。 あの夜、後部座席に死体を乗せ林道入り口まで彼女の車を走らせたのはあの男。暗くなり始めた雪の獣道を死体を引きずりながら歩いたのは彼女ではなくあの男。 そして凍った湖の上をぽっかり開いた氷の割れ目から彼女を放り投げ…もとの道に戻ろうとしたその時、重みに耐えかねた氷がばりばりと音を立て男をも飲み込んだ。 やがて死んだという自覚のないままに彼女は目を覚まし水の中からゆらゆらと意識の塊となり這い出てきて林道を戻り立て札の所へとやってきた。 ――誰か―― その入り口で佇んで通りかかる人を待つ。その全ての人が彼女に気付くわけではない。彼女がそこで誰かを待つようになってから役場の人間が幾度か訪れたが、彼は彼女に気付くことなく自分の仕事を終えて帰る。 ――誰か、気付いて―― 雪の中、風の中、彼女は朝空が白みはじめると雪深い林道をふんわりと歩き立て札までやってきて一日立ち尽くし、夕闇迫りはじめると目に見えない何かにひきずられるように湖の底に戻され、既に意識のない二つの肉体を眺めながら夜を過ごす。 最初の数日は男の意識らしきものも肉体を挟んで彼女と向かい合うように浮いていたが、やがて蝋燭の灯が燃えてつきるように小さくしぼんで消えてしまった。 どういう理屈か、どういう規則か解り得ないが、とにかく、彼女だけ一人取り残されてしまった。 そして彼女は今日も待っている。彼女の存在に気付きこの湖までやってきて暗い水底から冷たい体を引き摺り出し、明るい陽の下に戻してくれる日を。あの日誰が死に誰が死体をひきずって雪道を歩いたのか、混沌しはじめている忌まわしい夜の記憶を抱えながら 時折訪れる旅人の中には老夫婦のように彼女の佇む魂に気付く者も居るが、冬季通行止めの綱を超えて彼女と共に湖まで来てくれる人はまだ現れない。 ――今日も、誰も来てくれなかった―― 湖のほとりでは深い雪から顔を出した熊笹の枝が風に揺れ粉雪を落とす。 伝説となった娘の花はまだ開花の季節を迎えていない。本当に居たのかどうかも怪しい伝え語りの中にだけ在る龍神の存在は、寂しい彼女の魂を慰めることをできない。 早く見つけて。私を見つけて。そして私をこの暗い冷たい水底から救って。 春になれば雪が解けぼつぼつ旅人も訪れるだろう。そうすれば陽の射す場所に魂が浮かび出る日も来るだろう。しかしそれにはまだまだ長い日々を待たなければならない。 そして彼女はやがて訪れるであろう遠い春よりもずっと早く、その存在に気付き救ってくれる誰かを求めて僅かな期待を寄せながら今日も雪道を行っては帰る…… − Top− −Novel Top− 2006.4.4 |