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大和の酒と菜の花で
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やぁお客さん、ちょうどいい所に来た。え?何がちょうどいいって?まぁとにかく入って入って。
酒は今日はどうします?八海山?吟田川?それとも越乃白雁?はい?
「稲の国の稲の酒」?
こりゃまた珍しい。いつも北の酒ばっかり呑んでる人が西の酒ですか。どういう風の吹き回しで?
年末にそっちの友達に贈ってもらった酒がやたら美味かった?
まぁ確かにいい酒ですよ。なんてったって米がいい。奈良の農家と契約して杜氏に蔵人達が自分達で田植えから稲刈りまで関わってるそうですよ。
それにあっちの方、大和地方ったら酒造りの発祥の地ですからね。日本で最も古いお酒の神様を奉る……え?能書きはいいから?
しょうがないなぁ、燗にします?はいはい、冷でね。じゃぁとっておきの桧の杯でも出しましょうかね。杯っていうより湯呑ですけど。えぇ信州の方旅行した時に気に入って買ったんですよ。さ、湯呑の下に受け皿置いてたっぷりいきましょ。
いい酒ですよねぇ。さっぱりしすぎてなくてでもべたついてなくて、辛口なんだけど上品に甘いんですよね。
はい?さっき何がちょうど良かったのかって?あぁお客さん来た時のことね。
そうそう、この間ねテレビで肝臓にいい春の食べ物ってやってたんですよ。
お客さんよく呑むし、いつもよく言ってるじゃないですか。最近起き抜けが調子よくないとか食欲があんまり無いのにやたら太ってきたとか。
勿論アタシも似たようなもんなんでね、やばいなぁと思って観てたわけ。
それで今日やっと買い出しして作ってみたってわけですよ。
「菜の花の酒粕蒸し」
いや、ホントはどんな料理名だったか忘れちゃったんで名前は適当なんですがね、レシピはちゃんと控えてますから大丈夫。
少量の酒粕と醤油、砂糖にシソ油をよっく溶かしながら混ぜて下茹でした菜の花と水で戻した干椎茸の切ったのを和えてアルミホイルでくるくるっとくるんでオーブントースターで8分から10分。
ね?いい香りでしょう。
なんでもヨーロッパの方では昔から肝臓に良いとかで食べてたそうですよ、菜の花。これに酒粕と干椎茸を一緒に摂るのが良いってことでこの料理が紹介されてたんですけどね。
まぁまぁイケる?よかった、これからうちのメニューに加えようかな?簡単だし。
はい?でもこういうのは毎日摂らなきゃダメなんだろうって?うーんそうですねぇ、テレビでも二週間とか三週間とか言ってましたねぇ。そりゃ無理?毎日は食べられない?
まぁ確かに毎日は辛いかもしれませんねぇ。
あ、でも酒粕を甘酒にして菜の花と椎茸を普通におひたしにすればいいんじゃないです?これなら二日に一回くらいいけるでしょう。それにゴマ振ったりするといいかもしれませんねぇ。まぁ他にも菜の花ったら辛し和えとか卵巻きとかいろいろできるし。菜の花だけなら旬の間毎日でも食べれますよ。
はい?いつになく酒以外の事で熱心だ?
そりゃね、まだまだ残り人生あるようですから、肝臓壊してドクターストップなんてなっちゃったらアタシ生きてる意味が無いですからね。ちょっとでも良いって話ならそりゃ飛びつきますよ。それがこんなにお手軽料理ならなおよろしってね。
それにしてもまたこの酒に合いますねぇ。
え?酒のアテに酒粕料理だって?あぁそう言われればそうですね。でも酒の酵母って体に良いそうですから。
はいはい、お酒もう一杯ね。
それにしても「酒は北国」に拘ってたお客さんを開眼させたですか、この酒。
さすが日本酒の起源の国で産まれた酒ですね。
どれ、アタシも今夜は一杯いこうかな。
酒提供やん様 多謝!
肴情報「おもいっきり生テレビ」より
<2005.3.1>
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