■■■
秋はしっとり陽気に!
■■■
やぁお客さんこんばんは。
ひどい台風でしたねぇ。ご実家の方はご無事で?あぁそりゃぁよかった。
それにしても台風が過ぎたとたん、また急に寒くなってきましたよ。山の方じゃそろそろ赤くなったり黄色くなったりしてるんでしょうねぇ。
世間じゃ食欲の秋とかスポーツの秋とか賑わいますが、この年になるとどうもしんみりしちゃいますね。
おっと、こんなおじさんの哀愁ごっこにつきあわせちゃ申しわけないですね。
って、何ですか?お客さんもしんみりしちゃってるの?いけませんねぇ、年頃の娘さんがそんなことじゃぁダメですよ。
はぁ、同期のOLさんも後輩さんも皆彼氏作っちゃって?せっかく皆で予定してた紅葉狩りもブドウ狩りも企画倒れ?うーん、そりゃぁ秋風が身に沁みますねぇ。
このままじゃクリスマスも正月も寂しい?そりゃぁ気の早い心配ですよ。まだまだ秋も入り口ですからね、これから冬までにどんな出会いがあるかわかんないじゃないですか。
さぁ、気を取り直してっと。今夜は何で呑きましょう。
ぱぁっと気持ちが晴れるような酒?
そうですねぇ、アレかなぁ……
「ピンガ」
おっと、ペンギンのクレイアニメの弟じゃないですよ、って、何でそんなもんに詳しいの?まぁいいじゃないですか。
ブラジルの酒なんですけどね。ブラジルと言えば皆さんビールって思うんでしょうけど、こいつも結構有名なんですよ。さとうきびから作った蒸留酒、まぁ要するに焼酎ですね。
荒っぽくて一口飲むとくわぁー!て口の中に広がりますよ。まぁとりあえず一口試してみます?
どうです?見た目の柔らかい透明さに騙されたようなショックでしょう。
ブラジルじゃ安く手っ取り早く酔う為の酒、なんて、あんまりイメージ良くないようだけど人気はあるんですよ。
さて、呑み方ですが……ここは一つこの荒っぽい酒をいい感じにドレスアップしてやりましょう。
カクテル「カイ・ピリーニャ」
ライムをざっくり切ってグラスの中で潰す。こいつはライムをケチっちゃダメなんです。そして砂糖を加えてピンガを注ぎクラッシュアイスを放り込んでかき混ぜる。どうです?不思議な甘酢っぽさが加わって全然違う表情になったでしょう?
あぁ、今使ってるピンガは「カッサーシャ51」て、結構有名な瓶ですよ。
さぁて、酒が決まったらお次は肴ですが……
お客さん呑んでる時は食べないんですよねぇ。そうそう、グラスと箸だのフォークだの持ち替えるのが面倒くさいって言ってましたもんね。でもそれじゃあんまり体に良くないからまぁピーナツでもつまみましょうよ。
そうそう、とっておきの肴があったんだ、これこれ。
バーデン・パウエル
えぇ、ボサノバなんですがね、ブラジルのギターの名手ですよ。軽い耳障りのギターが踊るように弾けて、荒っぽいようでいてしっとり聞けるんですよ。
肴って言ってもね、食いモンじゃなきゃいけないなんて道理はないでしょう。心地良く酔う為のアイテムなんですから、口から入れるのが面倒なら耳から入れりゃいいんです。
どうです?何となく過ぎた夏を惜しむでもなく、しんみりとするわけでもない、だけど何々の秋なんて言ってアレもやらなきゃコレも食べなきゃなんて忙しくもないじんわりと穏やかでゆたかな気分になってきませんか?
でも大人の女気取って無理して背伸びしてるようには絶対見えない酒、それがピンガですよ。
あ、でも呑みすぎには注意ですよ。こいつぁ次の日ぐらっときますからね。
二日酔い対策に梅干とお茶とお粥は、冷蔵庫に準備して呑まなきゃ。
え?冷蔵庫にビールしかない?じゃぁ今日はこの一杯で終わりにしときましょう。
商売っ気ないですか?いえいえ、大事なお客さんですからね。呑ませすぎて体壊されちゃ元も子もありません。細く長く、これが上手に商売する秘訣。
って、しょうがないなぁ、じゃあ後一杯だけですよ?
秋はまだ始まったばかり。クリスマスも正月もまだまだ先の話ですよ。
のんびり呑りましょ、のんびりね。
<2004.10.1>
|